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【運用】行動ファイナンスを学び投資力アップ-行動バイアスが与える影響を知って投資判断に生かそう②~保守性バイアス~

投資や資産運用の世界で、投資家の意思決定に影響を与え、合理的な判断・行動をしばしば妨げる「行動バイアス」(先入観や偏見)。心理学をファイナンス分野へ応用して金融分野における人間の心理面の影響を分析する「行動ファイナンス」を学び、投資を行う際のよりよい意思決定、投資力アップにつなげていきましょう。

 

代表的な「行動バイアス」(先入観や偏見)について、しくみや影響などをひとつずつかんたんに見ていく、このシリーズ。
第2回目は、前回に続いて認知バイアスの一種である、保守性バイアス についてみてみたいと思います。

 

(このシリーズでは、Michael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に、その内容をかんたんにお伝えしていきます)

 

前回記事:

【運用】行動ファイナンスを学び投資力アップ-行動バイアスが与える影響を知って投資判断に生かそう①~認知的不協和バイアス~

 

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行動バイアスについて② -保守性バイアス


今回は、認知バイアスの一種で、保守性(Conservatism)バイアス についてみてみます。

 

【バイアスの説明】
新しい情報が入ってきたときに、人はそれまで持っていた考えや見通しに固執し、新たな情報を受け入れてきちんと認識ようとしない傾向があります。 これが保守性バイアスです。 

 

例えば、投資家が投資をしている企業が前月に業績予想を公表していて、今月その企業の業績に関してネガティブなニュースを受け取ったとします。 保守性バイアスにより、投資家は前月まで業績予想に引きずられ、最新の(ネガティブ)ニュースに沿った合理的な行動をとることができなくなります。 

投資家は、最新の情報を”認識”することをせずに、これまでの考えに固執してしまうわけです。

 

【投資判断におけるバイアスの影響例】

  • 過去の見通しや予想に固執してしまい、新たな情報に対して柔軟に対応した行動ができなくなってしまう。

    例えば、ある企業の新商品発売予定の発表をうけて株式投資をおこなった投資家が、その後、新商品の市場投入に問題が生じているとの企業発表を受け取った場合が考えられます。 投資家は、新商品は何とかうまく発売されるだろうとのこれまでの楽観的な考えに固執してしまい、最新のネガディブ情報に対して合理的な行動を取れない可能性があります。

     

  • 保守性バイアスに影響を受けている投資家は、新たに得られた情報を正しく認識できたとしても、対応した行動はかなりゆっくりとしたものになる傾向があります。

    例えば、悪い業績発表により投資家の保有する株式が下落したような場合、保守性バイアスに影響を受けた投資家は、企業のこれまでの良い見通しを引きずり、株式の売却が遅れがちになります。

     

  • 保守性バイアスは新たに得られる情報が難解で理解しにくいものであることによりもたらされる場合もあります。

    例えば、企業の成長を見通して株式投資を行った投資家が、会計処理の変更により利益成長が影響をうけるかもしれないとの企業発表を受けた場合、その内容が理解しにくいものであるときには、その情報をきちんと受け入れずに過去の利益見通しに固執してしまう可能性があります。

 

【バイアスの影響度チェック】
シナリオA:
東京在住のあなたは、冬のはじめに今年の冬は雪が多く降ると予想したとします。 2月下旬になり、まだ一度も雪が降っていないことに気が付いたあなたは、どのような反応をするでしょうか。

  1. まだ雪が降る可能性のある日は残っている。自分の予想はたぶん正しい。
  2. まだ雪が降る可能性のある日は残っているかもしれないが、自分の予想は間違っていたかもしれない。
  3. もう冬の終わりが近づいている。自分の経験からすると、自分の予想は間違っているだろう。 

 

シナリオB:
あなたは、自分の保有する株式の価格にネガティブな影響を与えるかもしれないニュースを聞いたとします。あなたの自然な反応はどれになるでしょうか。

  1. 企業の成長を確信してすでに投資を行っているので、そのような情報は無視する。
  2. なぜその企業の株式を買ったのかの理由を再確認する。 ただし、企業が成長するというもともとの確信は変わらないことが多いので、たぶん株式は保有しつづけるだろう。
  3. なぜその企業の株式を買ったのかの理由を再確認し、客観的な事実にに基づいて次の行動を決めたい

 

シナリオC:
あなたは、自分の保有する株式の価格にネガティブな影響を与えるかもしれないニュースを聞いたとします。あなたのその情報にどのくらいのスピードで反応するでしょうか。

  1. 通常、その情報が企業の株価にどのくらいのインパクトがあるのか市場で語られるようになるまで待ってから、次の行動を決める。
  2. その情報が企業の株価にどのくらいのインパクトがあるのか市場で語られるようになるまで待ってから、次の行動を決める場合と、直ぐに行動を起こす場合とがある。
  3. 直ぐに行動を起こす。

 

 

いずれかのケースで選択肢1. あるいは、2. を選んだ人は、保守性バイアスの影響を強く受ける傾向があると考えらます。

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「え~私まさに1番を選んでしまいました!?」

 

 

【投資行動におけるアドバイス】
保守性バイアスの悪影響を避け、より賢明な投資家になるためには、まずバイアスについての認識を深めることが大切です。 その上で、次のような点に注意しましょう。

  • 自分のたてた見通し・予測に固執しない・・・新たな情報が得られたときには、常にそれが自分が前にたてた見通し・予測にどのように影響をあたえるか考えてみること。
  • 新たな情報にはしっかりと反応する・・・新情報を注意深く分析したのちに合理的と思われる行動が明らかになったときには、躊躇することなく行動することが大切です。
  • 自分で理解することが難しい情報に直面したときには、専門家の意見を仰いだうえで、必要な行動を起こすことも大事です。

 

行動ファイナス、行動バイアスについて (ご参考)


従来の経済学や投資理論の世界では、「人は完全に合理的な判断のもとで自己の利益のみを目的に行動する」ことが大前提になっています。ところが現実の世界ではそのようなことはなく、実際の投資の世界では、先入観や思い込み、短絡的な判断をもとに投資の意思決定を行うなどということが多くみられ、また、そのような行動が市場全体に大きな影響を与えているケースがみられます。

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行動ファイナンスは心理学をファイナンス分野へ応用することで、こうした人々の投資行動がどのように起こるかを理解しようとしたもので、2000年3月のハイテクバブル、2008-2009年の金融危機などの際に特に注目が集まりました。 行動ファイナンスは個々の投資家レベルの行動から市場全体レベルの現象までをモデル化し解釈しようとします。すなわち

  1. 伝統的な経済理論における合理的な行動者から逸脱する投資家個人の行動やバイアス(先入観・偏見) (行動ファイナンスーミクロ)
  2. 行動ファイナンスモデルにより説明できる効率的市場仮説に対するアノマリー (行動ファイナンスーマクロ)

の検証を試みます。

 

ここでは「行動バイアス」について、個人投資家の投資判断に与える影響をみていきます。

 

行動バイアス(先入観・偏見)は、投資家の心の底に潜むもので、誤った認識にもとにした理由づけや、感情や気持ちに左右された理由づけにより導かれる非合理的な金融判断をもたらすものです。投資行動における行動バイアスの影響を理解することによって、投資家はよりよい投資結果を達成する可能性が高まると期待されます。

 

「行動バイアス」は大きく次の二つに分けられます。

  • 「認知バイアス」 (Cognitive Bias) は、統計的な誤認、情報分析上の誤解、記憶違いなどによって、合理的な思考からはずれた(投資)判断をもたらすもの
  • 「感情バイアス」 (Emotional Bias) は、自然に生じる感情や態度によって合理的な判断を狂わせるもの

 行動バイアス図

バイアスの影響を理解し、克服することで、よりよい行動(投資判断など)が可能となることから、ここでは、代表的なバイアスの仕組みや影響について、順番にかんたんな説明をしています。

 

なお、本セクションでは米国のMichael M.Pompian,著、Behavioral Finance and Wealth Management (second edition) を参考に「行動バイアス」についてまとめています。 ご興味のあるかたは、ぜひ原書をご覧ください。

 

 

 

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