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【景気】地震予知と経済危機予知 どちらも予測困難だが取り組みは進んできている。「金融活動指標」リスク管理からリスク検知へ

ITバブル崩壊、金融危機、これまで大きな危機を世界は迎えては乗り越えてきている。

そこで各国の中央銀行や政府機関ではいかにこのような大きなバブルを事前に感知し、その回避策や準備策を構築できるか?に真剣に取り組み始めている。

それらの情報を個人の投資家も有効に活用し、市場の混乱を避け、より安定的な資産運用を行ってほしい。

わかりにくいので、地震の予知と似たようなことが金融でも行われ始めていることだけを最低でも覚えておくと良いでしょう。

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経済の分野では多くのフォーカスが生じた現象について考察を行い、その理由付けを考えるというものが多い中、徐々に様々な事象を事前に感知し、その過熱感や停滞感を判断しながら、バブルの到来、行き過ぎ感の数値化を試みることが、始まっている。

地震でもGPSの情報や、海温の計測、動物の行動、火山活動から地震を予測する努力がされてきている。はたして経済においてもあらかじめ金融危機を予知し、それに対して有効な金融政策や財政政策等を打つことが可能なのか?

金融機関は自分の顧客の大事な預金を守るためのアクティブな行動がとれるようになるのか?試みは始まったばかりであるが、経済学や金融学をより面白いものにしてくれそうな期待がある。

日銀が半年に一度定期的に発表している「金融システムレポート」という文章が公開されている。簡単に日本銀行のHPからダウンロードが可能だ。

このレポートは

(1)わが国金融システムの安定性について包括的な分析・評価を示し、

(2)金融システムの安定確保に向けて関係者とのコミュニケーションを深めることを目的として、

年2回公表しているもの。

現在は10月17日に公開されたものが最新となる。

ここで紹介されている金融活動指標が、金融の安定度、あるいは過熱感、停滞感を感知するためのセンサー的な役割を担っている。 

「金融活動指標」


様々な統計値や、市場データから金融システムの安定性(あるいは過熱度)を数値化し、もし過熱感があればそれを数値的に捉え、可視化するための指標だ。

ストレステスト、シミュレーション等の良く聞くことのある分析とはやや趣の違うものだが、景気自体以外にも、金利の予兆管理、経営のための市場のシナリオ分析等に使うことのできる指標である。

バブルが近い、リスクが高まっていることを早めに感知し、アクションが他の国々あるいは金融機関よりも早くとれることは非常に意義がある。 各国違った変数を使用し、様々な分析を加えている。

 

「金融活動指標」では、各指標の趨勢からの乖離をみることにより過熱感を判断する。様々な経済変数の”トレンド”からどれだけ近頃の値がかい離しているかを見るものである。 トレーディング等に詳しい方は、すぐに移動平均線やボリンジャーバンド等のアイデアを思い浮かべられることであろう。

 

【使われている指標】


 2014年の指標で使われている経済指標・統計指標は以下のようなものになっている。

【14の指標ともとのデータ】

金融機関 金融機関の貸出態度判断D I 日本銀行  全国企業短期経済観測調査
M2成長率 日本銀行  マネーストック
金融市場 機関投資家の株式投資の対証券投資比率 日本銀行  資金循環統計
株式信用買残の対信用売残比率 東京証券取引所  信用取引残高
民間全体 民間実物投資の対GDP比率 内閣府  国民経済統計
総与信・ GDP比率 日本銀行  資金循環統計
家計 家計投資の対可処分所得比率 内閣府  国民経済統計
家計向け貸出の対GDP比率 日本銀行  貸出先別貸出金
企業 企業設備投資の対GDP比率 財務省  法人企業統計
企業向け与信の対GDP比率 日本銀行  貸出先別貸出金
不動産 不動産業実物投資の対GDP比率 日本銀行、内閣府  貸出先別貸出金
不動産業向け貸出の対GDP比率 日本銀行、内閣府  貸出先別貸出金
資産価格 株価 東京証券取引所  TOPIX等株価指数
地価の対GDP比率 日本不動産研究所  市街地価格指数

 

この指標の選択される過程では、

候補となる指標を14のカテゴリーに分類し、(この分析では当初190程度のインデクスを分析・検討)

次に、これらのカテゴリーごとに、分類された指標の有用性を以下の2つの観点から検討している。

  • 第一に、わが国の経済・金融活動に大きな影響をもたらした平成バブルの過熱を察知できたかという観点である。
  • 第二に、各種の統計的な過誤を小さくできるかという観点である。その際、指標のトレンドの算出方法や、トレンドからの乖離がどの程度であれば過熱と判断するかの基準(閾値)についても、複数の選択肢を考慮

細かな統計的な話は割愛するが、この指標の目的が平成バブルのような危機の検出を目的としており、そのモデルが大きな判断の誤りに導かないかを統計的にチェックしているというものだ。 

 

【金融活動指標の結果表示】


最終的に出来上がった過熱感を表示するグラフが以下のようなものになっている。

金融活動指標は、金融活動の状況を捉えるために有用な 14 個の指標から構成されており、それぞれの指標の足もとの水準が過去の趨勢的な変動(=トレンド)からどの程度乖離しているかをみることで、金融活動が過熱しているのか、または停滞しているのかを判断することができる。

金融活動の過熱・停滞感を読み取るためには、足もとの指標の水準が、トレンドからどの程度乖離しているかを把握する必要がある。

CCB の設定・運用のガイダンス(BCBS, 2010)においても、基本的な参照指標である総与信・GDP比率の実績値とトレンドの乖離が大きくなった時に、過熱と判断することが想定されている。

このように、早期警戒指標に関する分析では、指標の実際の水準とトレンドの差である「ギャップ指標」の動きを分析することが、一般的となっている。

各指標について、後方3 年移動平均値をトレンドとみなし、各指標の実際の水準とトレンドの乖離(=ギャップ)が、上限の閾値を超えて上昇した場合には過熱方向への変化、下限の閾値を超えて下落した場合には停滞方向への変化と判定している。同レポートは、こうした個別指標の過熱・停滞に関する判定結果を、過熱を赤色、停滞を青色、それ以外を緑色に色分けした「ヒートマップ」のかたちで示している。

【金融活動指標のヒートマップ】

FinancialRatios2000

1980年から200年


FinancialRatios2014

2000年から2014年

 

14年度(X軸)で赤が見えるのは、唯一家計投資の対可処分所得比率と株式信用買残の対信用売残比率である。これらはアベノミクス効果とNISAの導入により、個人の株式投資、投信購入が進んできていることによるものであり、この数か月はやや衰えてきていると思われ、すぐに問題を引き起こすことはないと思われる。

この指標の研究自体が、各国当局や国際機関が、新たな銀行規制であるバーゼル III への移行に伴うカウンターシクリカル資本バッファー(Countercyclical Capital Buffer, CCB)の導入に向けて準備を進めているのと同じ方向性を持っており、この手の分析が金融規制当局にも、金融機関にも必要とされてきている。

地震だけではなく、経済ショックについても予知や予兆の検出が大きなテーマとなってきているのであり、リスク管理からリスク検知の時代へと移行してきているといえる。

 

(出所:日本銀行ワークングペーパーシリーズ『金融活動指標』の見直しについて)

 

 

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